●牧師の書斎より その2『同質の原理』 |
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日野原重明先生は日本音楽療法学会を立ち上げて,音楽療法を広めようとしておられます。この音楽療法の基本は,悲しんでいる人を癒すためには,悲しみに満ちた曲を提供し,興奮ぎみで苛立って(いらだって)いる人へは,元気で激しい曲を提供すること,これを「同質の原理」というのだそうです。 そういえば思春期の頃,私は毎日のように,ベートーベンやワーグナーやブラームスの実に激しくやかましい大曲を大きな音で聴いていては,家族のひんしゅくを買っていました。その頃は,今ではあまり聴くことのなくなったチャイコフスキーやベルリオーズなどの癖ありの曲さえもよく聴いていました。今思うと,当時の私は日々猛烈に苛立っていたのだと思います。しかし,この激しい音楽が身近にあったことで,随分と私は助けられました。 新約聖書ローマ書12:5には,「喜ぶ者といっしょに喜び,泣く者といっしょに泣きなさい。」と語られています。これは,キリスト者が隣人とどのように向き合うべきかについて教えられている御言葉ですが,ここにもこの「同質の原理」のことが教えられています。 一方,罪からくる人の知恵は,弱っている人たちに,こういうことを言ってしまいやすいのではないでしょうか。「苛立っているなら,もっと静かな音楽を聴けばいいのに」「悲しいときに,こんな暗い曲を聴いていては,もっと暗くなっちゃうよ。」「泣いてなんかいないで,もっと喜びなさいよ!」 「うつ病なんて言ってないで,がんばらなきゃ!」「病気は気からですよ!」 相手のことを思って励ましているつもりなのかもしれない・・。 しかし,これでは,弱っている相手はさらに痛んでしまいます。 私たちの団体も東北の被災地へのボランティア派遣を始めました。 そこは想像以上の光景が広がっていると報告されています。 また,そこには想像以上の人々の悲しみがあるのだと思います。長い闘いとなりそうです。 いや,被災地だけではありません。私たちの周りにはたくさんの弱った人たちがおられます。 キリスト者である私たちは,この「同質の原理」の考え方をしっかりと理解し,また身につけていくことが求められているのではないでしょうか・・。 | |
牧師:北澤正明 |