牧師の書斎より その4『鯛か鱒』
   
 

 確か,神学生になる少し前だったと思います。ある日,私は自分の祈りに変な 部分があることに気づかされて,ドキッとさせられました。その日までの私は,こ のようによく祈っておりました。「神さま。私はもっと思いやりのあるやさしい人 間になりたいです。」「もっとたくさんの友人たちを教会に招きたいです。」「も っと献金もささげたいです。」「御言葉を実行する人になりたいです。」 鋭い方は もうお分かりでしょう。そうです。私の祈りはタイの大安売りであったのです。

 この恥ずかしい経験があったので,牧師になってから,教会学校でこんなお話 をしたことがありました。 →『みんなは,お魚よく食べますか』(「食べる〜!」と 一斉にこどもたち)『じゃあ・・鯛は食べたことありますか・。あの高くて,お祝いの ときによく食べる赤いお魚。』(鯛がわからない子も,「ある〜」と返事)『じゃあ・・ 鱒という魚は知っていますかぁ・・。』(みんな静かになってしまう) 『鯛は高くて, なかなか食べられないお魚。鱒はもっと安くていつでも食べられるお魚。では・・神 さまは・・・どっちのお魚の方が好きだと思いますか?』(こどもたちは一斉に・・ 鯛!)『残念でした。神さまは・・鱒の方がお好きなのです。 きょう帰ったら,お母 さんやお父さんに同じ事を話してみてください。そして,教会の牧師さんが「神さま は鯛より鱒の方が好きなのです。」と言っていた,と言ってみてください。では・・ お祈りしましょう。「神さま・・私たちは今日からみことばを実行する子どもにな りマス!どうか,弱い私たちを助けてください!」』

 よく考えると,「なりタイ」という祈りには逃げ道がありますが,「なりマス」 という祈りには逃げ道がありません。マスという祈りには「決心」と「告白」が入っ ています。しかし・・この「マスの祈り」には・・悩みが伴います。そうなっていか ない自分,自分の願いと現実との大きな差,等など。しかし,聖書にはこう語られて います。
 →「正しい者の悩みは多い。」詩43:19
悩みつつ,主にお仕えしてゆく・・・これはそのキリスト者が誠実であるという証の 一つなのです。ですから,それでも尚ひるまず,タイからマスの祈りに大胆に変えて いこうではありませんか・・・。

 蛇足ですが・・鯛や鱒より,食べるなら,目黒のサンマの方がいい!と思ってい る方は多いのかもしれません。私もその一人です。


牧師:北澤正明