牧師の書斎より その6『ものずき』
   
 

 11月の礼拝では旧約聖書のヤコブの記事を皆さんと学ぼうとしています。
ご存知の方も多いのですが,このヤコブというこの名前は「人を押しのける」という 意味です。そして,このヤコブという人を知れば知るほど,誰もが,「この男は正に この名の通りの人間だ。」そう思ってしまいます。
私は今,このヤコブの記事をあらためて読み,そこに展開する出来事,その時々の人 々の心の中について思いめぐらせているのですが・・その結果,私も以前にも増して この人物が嫌いになってしまいました。

 ところが,この私たち人間が知れば知るほど嫌いになってしまうこの人物に, 神さまは,彼が自己中心な行動に走れば走るほど益々彼に近づいてゆかれ,ついに は取っ組み合いとなり,彼の股のつがいを打ってそれをはずしてしまう荒治療をな さったのでした。そうです。神さまはこのヤコブを祝福しておられたのです。この やっかいな素材と正面から向き合って,思い切って手を加えてゆかれたのでした。 神さまは実に「ものずき」な方であると思います。

 私たちは,このような「嫌なヤツ」と向き合うことはとても耐えられません。 聖書はここで私たちに,このような人物と向き合え!耐えるのだ!と教えているわ けではありません。聖書がヤコブの記事で最も語りたいことは,そういう道徳的教 えではなく,そのような欠陥人間に向き合ってゆかれる神さまのそのお姿のことで す。

 ところで,この嫌なヤツ,ヤコブ・・私たちはどこかでみたことがあるので はないでしょうか・・。 私は最近,鏡で自分の顔をみると,ゾッとします。
しわ,しみのオンパレード。たるみも,ゆがみもひどいものです。しかし,自分 に言い聞かせます,「似てる!祝福されたヤコブに似てる!顔かたちは似ていな くとも,相が似てる!そっくりだ。大丈夫!主はものずきな方だから。ヤコブも ザーカイも・・そして,君とも向き合って下さる!」

 「恐れるな。虫けらのヤコブ,イスラエルの人々。わたしはあなたを助け る。」(イザヤ41:14)


牧師:北澤正明