牧師 の書斎より その8『捨て上手』
   
 

先日,新築した家に引越しをするお客さんに様々なアドバイスをしている,大手不 動産会社勤務のEさんから興味深い話を聞きました。

彼は,これから新しい家に引越しをしようとするお客さんに,いつもこうアドバイ スするのだそうです。「新築の家に引っ越される時には,今までのものを思いっき って捨てることが肝心だと思います。」ところが,中にはこの意味がよく分らず, 今まで使っていた古い家具や道具などの一切を捨てることが出来ず,そのほとんど の物を新しい家に持ち込んでしまう方がおられるのだそうです。そうすると,新し くいい香りがしていた家も一変し,その家の中は,何ともいえない不潔な空間にな ってしまうのだそうです。(余談ですが。私はこのお話を聞いていて,このアドバ イスは,目黒カベナント教会の新会堂ができたときにも思い出さなければならない ことだ。と思いました。)

新しい年を迎えると,確かに,私たちは,周りも自分も何か新しくなったような気 分になります。そして,「今年は新しい自分になれる!」そんな思いにもさせられ ます。しかし,一年経って自分を振り返ってみると,どうでしょうか。気分だけで はやっぱり人は新しくならない・・そのことに気が付かされてゆくのではないでし ょうか・・。

聖書は新しくなるためには「大胆に,古い自分,つまり,今までの考え,今までの 習慣,今までのこだわり,今まで大事であると思ってきたこと等を,大胆に捨てて しまうこと」を勧めています。(エペソ4:22コロサイ3:9.Uコリント3:14等など) イエスさ まも,ルカ5章で,古い皮袋を捨てることができないで,古い皮袋に新しいぶどう 酒を入れてしまうようなことをしてはいけません。新しいぶどう酒は,新しい皮袋 を(複数)用意して,そして,その新しい皮袋に入れるべきなのです。と教えてお られます。つまり,私たちは新しくなりたいと思ったとき,今までにない,新しい ものを取り入れてゆくこと,このことがまず大事であると考えやすいのですが・・ 実は,私たちが新しくなるためにまず大事なことは・・「捨てること」であると聖 書は教えているわけです。

ですから,この真理を悟っている賢い信仰者は,毎週もたれる主日礼拝でも,自分 の中にある古きものを次々と捨て去ってゆかれます。それはまるで,脱皮をくりか えし成長しつづけるあの動物たちのようです。古く硬く狭く強い主張,古き肉の思 い,利得や,自己実現や,自己満足の心・・等を簡単に捨て去ってゆかれます。そ うです。賢いとは,「捨て上手」であることなのです。国粋主義者からキリスト者 に回心したあの使徒パウロはこのように告白しています。→「古いものは過ぎ去っ て,見よ,すべてが新しくなりました。」 (Uコリント5:17)


牧師:北澤正明